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【感想】「岬の兄妹」【ネタバレ有】

【あらすじ】

とある地方の港町。足に障碍を抱え、リストラされたばかりの兄・良夫は、自閉症の妹・真理子と2人暮らしをしていた。妹の失踪癖に手を焼いていた良夫はある日、夜になっても帰ってこなかった妹が町の男に体を許して1万円をもらっていたことを知る。
 

(Google検索より引用)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*以下ネタバレ有の感想

【感想】

 

この映画を観たのはネットで話題になっていたから。そして面白そうだと言った恋人が隣にいたから。

一人だったらまず観なかったと思う。

だってあらすじからも漂う胸糞臭……。陰鬱とした雰囲気とどうしようもない絶望感。

普段明るい映画やアクション系の映画を好んで観る私にとって、この映画の視聴はとてもしんどかった。

生きるため、妹を売ってしまう兄と、売春を始めてからの方が元気(?)な妹。

一日中薄暗い部屋に閉じ込められていた真理子が売春を始めてから、人としての生活のようなものを送っているように感じた。

やっていることは最低だが、真理子は進んでやっていた部分もあったわけで、始まる前と比べれば人との交流もあってどこか、人間的な部分が育って(?)いったように感じた。

 

良夫は最初、真理子が襲われてお金を持たされたと思い凄く怒っていたが、最終的に真理子に体を売らせることで生活に必要なお金を稼ぐ選択をしてしまう。

妹思いな兄であるのに、妹を売ってお金を手に入れている。

最低で、残酷で、クソみたいな選択だ。

 

でも、二人ぼっちで生きていくしかない兄妹の選択を誰が責められるんだろうと思った。

警察官の肇に開き直った良夫が言う「偽善者」という言葉。これが堪らなく胸に残った。

最低な行為である事に変わりはないし、最悪な決断で道徳的では無い金の稼ぎ方だが、辞めろと言うだけで直接的な助けはないんだよな。

 

辞めろと言うのは簡単だよ。辞めた方が良いことくらい、そんなことは良夫本人も分かってると思う。でも、誰も助けてはくれないんだよな。

この映画の世界、生活保護とか障がい者手当とかどうなってんのかな?

そこがテーマではないから省いたのか何なのか、あまりにも救いがない……。

 

お腹減りすぎてティッシュ食べちゃうところとか、真理子が稼いだ金でハンバーガーを貪るところとか……。

 

 

 

救いと言うには辛いが、真理子が嫌な思いをしていないのは良かったなと思う。嫌がる真理子に無理矢理……ではなく、真理子が積極的に自ら行為をするのは唯一の救いだった。

それさえも無ければ、この映画は途中でリタイアしていたと思う。

最初の良夫が裸の真理子を殴っていたシーンはしんどすぎて目を背けてしまったが。

 

そして良夫が最後に「戻ってこないか」と元の仕事先の上司に言われた時、あの瞬間の絶望は計り知れ無いと思う。

あの、今までのは一体何だったんだ感……。

仕事をリストラされて、でも生きなくちゃいけなくて、それでそういった選択をしたのに、それなのに、、、、、っていう。

 

最後は子供を下ろした真理子が、冒頭と同じような雨の中で死のうとしていて、止めにきた良夫の携帯に着信が鳴る……というラストだったが、あれは多分また売春のあの電話だったんだろうな……と言う感じ。

 

売春を初めて真理子は、本当のところはどうか分からないが、好きな人のようなものが出来て、「私のこと好き?」に一時の戯れでも返してくれるひとがいて、それで承認欲求とかも満たされていて………やっぱり売春をしていた時の方が生き生きとしていたよな……と感じた。